この街で君を拾う

「はいはい」

私をなだめるように、大きな手で、私の頭を優しく撫でた。

「んもぉ。18時くらいに帰ってくるからね。行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい」

一人暮らしだったから、誰かに見送られるのが変な感じ。

でも、誰かと暮らすのも悪くない。

家を出たばかりなのに、早く帰りたいと思いながら、いつもの道を歩く。



「ねぇ、野中さん彼氏いたんだね!」

今日同じシフトに入っている、2つ年上の先輩、羽田さんが話しかけてきた。

「いたというか、つい先日できまして…」

彼氏なんて初めてだから、その言葉を口にするのは歯痒い感じがする。

「昨日うちの弟がスーパーで見かけたって言っててさー!ほんとだったんだ!」

見られてたのか。

まぁ、この近所じゃ一番大きいスーパーだし、みんな行くよね。

照れ笑いしながら、なんとかパンの補充を終えた。

「馴れ初めとかないのぉ〜?」