だけど、今思えば言わなくて良かった。


それに、女性に囲まれる難波さんはどこか上の空っぽかったし、何度もあのんに視線を向けていた。


そんな難波さんを見ていたら、わたしの出番は要らないかな、って…。


だから、難波さんが居酒屋を飛び出した時はホッとした。



「足立、そろそろ帰ろうぜ。」


「ん。そうだね。」



有馬と居酒屋を後にし、夜空を見上げながら願う。



どうかあの2人が幸せな選択をしますように、と。



難波さんにはあのんを幸せにしてあげてほしい。あのんを幸せに出来るのは難波さんだけだから。



「足立ぃ〜、」


「あ、はいはい。てか有馬呑みすぎ。お酒臭い。」


「仕方ねーだろ。呑むのが部下の仕事。」


「はいはい。有馬の家こっちだっけ?」


「ばか。反対。」


「意識はしっかりしてるんだ?」


「だから酔ってねーって。」



難波さんが海外に行って、あのんが寂しくなった時は、有馬と3人で呑みに誘ってあげよう。


そんなことを思いながら有馬を送り届けた。