部屋に戻ると、柾樹さんはベランダに出て電話をしていた。



いつもは部屋で電話するのに、聞かれたくないようなこと?



最近、ラブレター貰った生徒…とか?



程なく戻ってきた柾樹さんが、背後から私を抱きしめた。



今日は、いくら甘えたってダメなんだからっ!



私が柾樹さんの手をピシャリと叩くと、柾樹さんは抱きしめていた腕を解いた。



「私、今日は隣の部屋で寝る。」



「梨香?」



「アンジェが困っているの、先生だって分かってたでしょ?

それに私は、子供作るためだけに…したくない。」



疲れてるからって、排卵日の時だけ義務みたいに抱かれるようになったって感じたのはいつからだろう…。



心の中で、色んな嫌な感情がごちゃ混ぜになってる。



最近何かを隠してるのか、柾樹さんが難しい顔してることが多くなったことから始まって…。



少しずつ、柾樹さんに対する不満が溜まっていった。



アンジェに泊まって良いよって声かけたのも…彼女が困ってるからじゃなく、自分のためだったのかもしれない。



私が俯いていると、背の高い柾樹さんが屈んで私の顔を覗き込んだ。



柾樹さんは、今は何言っても無駄だな…なんて表情でため息をつくと、寝室に向かった。