まずは、情報収集した方が良さそうだ。
僕は携帯のアドレス帳から、彼の番号を探し当てた。
『柾樹兄さん、久しぶりだね。
今度のパーティーは来てくれるの?』
電話の相手は、半分だけ血を分けた弟の哲也。
「僕は家を出た身だ、行ったら面倒なことになるだけだよ。
ところで、パーティーで何か企んでるらしいな。」
『企んでるって、人聞き悪いなぁ…。』
「じゃあ、言える範囲でそっちの状況を教えて欲しい。」
『僕らの父さんが、無類の女好きだってことは…。』
「よく知ってる、また隠し子が見つかったらしいな。」
『さすが情報早いね、まだ真偽は分からないけど…。
今回の相手は名家の出だから、後ろ盾のない俺の母さんが焦って…。』
「梨香を拉致したのか!?」
『ちょっと待って、そんなコトするわけ無い…って、梨香さん拉致されたの!?』
「そう、だから電話してる。」
『母さんがやったのは、俺に後ろ盾をつけることだよ。』
「政略結婚か、相手は?」
『身も蓋も無い言い方だね、相手は…まだ内緒。
こっちは、柾樹兄さんを蒼家の表舞台に立たせる気ないから安心していいよ。
父さんの隠し子っていうのを連れてきた人間の仕業なのかは、俺の方で探り入れて分かったら連絡する。
あとは、柾樹兄さんの血筋を洗った方が良いかもしれないね。』
「僕の…血筋?」
『今更って思うかもしれないけど、柾樹兄さんを跡目にしたい人間がいなくなったわけじゃないよ。』
「なるほど、参考になった。
哲也の母さんに、伝えてくれるかな?
“梨香に手を出さないうちは、僕はあなたの味方でいる”って。」
『了解。』