いつものように、他愛ない話をしながらイタミンの地元へと向かう。

途中、あまり見たくない景色…つまり母校の近くを通ったが、その時は車窓は見ずに、そっと、運転するイタミンの端正な横顔を盗み見た。

はじめて見せる姿が、なんだかとても新鮮だ。

ずっと山の中の国道を走っているわけだが、流れる景色は、なんだかいつの時代かわからない夏休み、という感じがして、不思議な気分になる。

気の利くイタミンは、車中では私好みの洋楽を流していてくれた。

そういうシチュエーションにも密かに憧れていたが、この車窓からの眺めは…私の勝手なイメージ的に、吉田拓郎や井上陽水あたりのフォークの世界だ。

「着いたよ。ここなら、深すぎず浅すぎないし。でも、エルちゃんは、岩や橋から飛ぶのは危ないかな…」

「運転お疲れ様。私は飛ばないよ、怖くてムリムリ!」

思えば、川遊びなんてしたことがない気がする。

それ以前に、水遊びというもの自体かな…?

小学校にはプールがあったが、中高にはなく、実家から海水浴場までは結構遠いので、痩せていた頃から、あまり泳ぐという行為そのものをしたことがないのだ。