「終わった、ね」


雨音がポツリとつぶやいた。


慈雨が真広に思いを馳せているうちに、AOの歌唱が終わっていた。


白い羽根が宙を舞い、歌の余韻が冷めないうちに、すでに次の歌手が別ステージにスタンバイしている。


この番組では、歌い終わった歌手があとでトークに加わる場面も珍しくはないので、出番が完全に『終わった』わけではない。


だけど、
雨音の『終わった』には、また別のニュアンスが含まれていた。


今日は日曜日。


この番組が終われば、お風呂に入って寝るだけ。


明日からまた学校だ。


雨音はその事実を思い出して、急に気持ちが沈んでしまったようだ。



雨音はいいよ…


クラス替えはないんだから……


ちょうどその時、慈雨のスマホが震えた。


友人の春名 萌香(はるな もえか)からのメールだ。


AOの新曲の感想と、チケットの当落状況について書かれている。



萌香と同じクラスになれたらいいな…


慈雨は返信の文章を打ち込みながら、ふぅとため息をついた。