「よな」


こんなわたしとは正反対な、太陽の温もりを秘めた声がわたしの名前を呼んだのとほぼ同時に、雨が止んだ。


正確には、傘を差し出された。


「濡れたら、風邪ひくよ」


いつもの表情で、いつもの声色で、わたしのことを見下ろす彼。


優しくしないでほしい。


放っておいてほしい。


わたしは、孤独が好きなんだ。


「・・・駐輪場まですぐだし」


素直じゃないわたしは、傘の下から一歩後ずさって、再び雨と一体化した。


つかの間、またもや傘を差し出される。


あぁ、この人は優しいから。


陽だまりのような温かい人だから。


放っておけないんだろう。


わたしみたいな、"可哀想"な人のことを。


「傘、いらない」


それでも、どけてくれない。


言っても無駄だと思って、何も言えなかった。


相合傘。


彼の体温をすぐそばに感じて、余計に自分が分からなくなった。


分からなくてよかった。


気づいたらおしまいだと思ったから。