MVのワンシーンみたいにさ。


雨空の下、傘も差さずに雨に打たれる演出ってあるじゃん。


あの瞬間って、惨めだけど、まるで自分が可哀想な主人公みたいで、好きなんだよね。


いまのわたしに、お似合いかもよ。


スクバの中で眠る折りたたみ傘。


一瞬手を伸ばしかけて、すぐに引っ込めた。


どうせ駐輪場まで少しだし。


これくらいの雨なら、濡れたってどうってことない。


覚悟を決めて、足を踏み出す。


寒い雨空の下、夜雨に濡れる。


一歩一歩を踏みしめる。


全部洗い流して。


わたしの中の、要らないもの全部。


記憶も、感情も。


雨の中に溶けてなくなればいいのに。