リビングのテーブルの上に置いてある、一枚のパンフレットを見た。

『はなの絵展 』

 今は九月。北海道ではちょうどこの時期に見頃な、ピンク色のコスモスの花が二輪、パンフレットいっぱいに大きく描かれていた。それに寄り添うように見覚えのある名前はあった。

『神楽渉《かぐらわたる》』

 ――この名前、彼だよね?

 彼とは中学の途中まで、同じ美術部だった。何故途中までなのかというと、中学二年生の時、彼は転校してしまったから。

 あの頃も、私の絵なんて全く敵わないなと思える程に、彼は絵を描くのが上手かった。けれども、今、私の目の前にある絵はもっと上手く、今すぐにコスモスがゆらゆらと風に揺られそうだった。繊細でリアルな絵。なんていえば良いのか分からないけれど、とにかく上手かった。