歩きながら、
「ごめん。バレちゃったよね」
と智花を見下ろす。
「ふっ。全く悪いと思っていない顔してるわよ」
智花は嬉しそうに笑った。


「晴久、こっち向いて」
「ん?」
と顔を向ける。
智花が手を伸ばし、俺の唇に触れた。

「口紅ついてる?」
ごしっと指先で擦られる。
「とれた?」
「暗くてわかんない」
「あはは。見えないのに擦ったの?」
「んはは。うん。全然見えなかった」
「あはは。じゃ、明るいとこで見てよ」
「分かった!」


もう一度しっかりと手を繋ぎ、くっつくようにして歩く。
「寒いよお」
「うん、めちゃくちゃ寒い」
「あははは」
「はははは」
その足取りは早歩き。
だんだん面白くなってきて、けたけたと笑いながら急いで歩いた。