「ねえ、倖ちゃん」
八重樫さんはそれまでの人懐こい笑顔を隠し、真面目な顔をした。
「?」
「海外事業部に来る気はある?」
びっくりしすぎて、思考回路が止まった。
榊さんと桐谷さんも同様に固まった。
「えっと・・・唐突にどうしたんですか?」
「合コン来てるってことは、彼氏と別れたんだろ?じゃ、すぐに結婚とか考えてないだろうし。
海外事業部は大変だけどやりがいもものすごくあるぞ。倖ちゃんなら俺も推薦できる。
それに・・・また一緒に働きたい」
「いやいや、無理ですよ」
「なぜ?」
「内緒ですよ」
小声で
「彼氏できたんで」
と教えた。
「ええええええ!まじで?!」
「こ、声が大きいから」
「ごめん、ごめん。で、誰?」
小声で話しかけてくる。
「…八重樫さんの知らない…社外の人です」



