女をしげしげと眺めていると、こちらに顔を向けたので慌てて目を逸らす。


確かにどこかで会った気がする。

アルコールの回った頭で懸命に記憶を探ってみたが判然としなかった。


それにしても――ずばり好みのタイプだ。

女を意識しながら、ちびちびとビールを飲む。


「ねえマスター。あの子はよくこの店にくるの?」

小声で訊いてみる。


僕、女、僕、とたっぷり時間をかけて視線を移し、マスターがようやく口を開いた。

「いいや。初めて見る顔だねえ」

へえ、と答えてからビール瓶を口元にやり、さりげなく女を見る。


カウンターに座っているのは僕と女だけだった。

店内を見回すと、奥のほうでテーブルに突っ伏して寝ているスーツの男が一人いるだけだ。