――不敵な笑みを浮かべ、じりじりと間合いを詰めて来る。






微塵の隙も窺えない――。


彼奴の正眼に構えた太刀先が妖しく月光を照り返す。

生唾を飲む。

柄を握る掌に汗が滲む。


定めし瞬刻にて雌雄を決するに相違なかろう。



しかし妙だぞ……


何だって比留川と斬り合う破目になっちまったんだ?



一陣の風。

枝垂れ柳のざわめき。


何処かで野良犬の遠吠えが木霊した。














開けっ放しのトイレの小窓から、野良犬の遠吠えが聞こえた。