その後どうやって帰ったのか、正直記憶がない。
試合の興奮とアルコールのせいで、気がつけば朝になっていた。
何も身につけていないところを見ると、無意識に宝を抱いてしまったらしい。
酔って記憶をなくすなんて、俺も歳かなあ。

「怒ってる?」
すぐ隣で眠っている宝を、ギュッと抱き寄せて尋ねた。
「ええ、怒ってる。でも、剛にではなくて、自分にね」
冷めた目をした宝。

宝の心には闇がある。
もちろん誰だって過去はあるし、秘密だって持っている。
しかし宝の闇は、大きくて深い。

「剛、私起きるから離して」
そう言って、腕をほどこうとする。

時刻は午前5時30分。

「まだ早いだろ?」

宝の経営するカフェのオープンは9時。
出来ればもう少し、こうしていたい。

「今朝、明日鷹(あすたか)が来るの。だから、少し早めに行くわ」
「あいつ、何しに来るんだ?」
いくら俺の親友でも、宝から男の話は聞きたくない。

「テイクアウトの朝食を彼女に届けたいらしいの」
「へえ」
俺は興味なさそうに返事をした。
彼女ねえ・・・

「ねえ、」
ベットから起き上がった宝が、真っ直ぐ俺を見ている。
「何?」
「明日鷹の彼女ってどんな子なの?」

ううーん。
どんなと言われても、一言では言えないな。