不意に、宝がテーブルのワインボトルに手を伸ばした。
震える手で、グラスにワインを注ごうとする。

「馬鹿っ」
俺は咄嗟に止めた。

ワインボトルを取り上げ、近くにあった日本酒やビールを集める。

「やめて。まだ飲むの」
ふらつく足で俺に向かってくる。

「いい加減にしろ」
もうボロボロじゃないか。
それとも、本当に死にたいのか?


集めた酒をキッチンへ運び、流し台で流す。

その時、
ガチャンッ
ガラスの割れる音と共に、
「キャー」
宝の錯乱した声が響いた。

た、宝・・・

リビングに駆け込むと、割れた空き瓶やグラスの中で血を流している宝。

「わぁー」
半狂乱だ。

「お前っ」
俺は宝を抱きしめた。

叩き、もがき、暴れる、宝。
でも、俺は離さない。
もう離さないと、決めたんだ。

「うーん。うううーん」

苦しいのか、俺の腕の中から逃げようとする。
それでも、俺は抱き続けた。

いつしか暴れる力は弱くなり、動かなくなった。
寝てる?
宝の暖かさを感じながら、俺はそのままソファーに横になった。