「すみません。連れが何かしましたか?」
「はあ?」
いきなり声をかけられ、憮然とする男性陣。

「さっきから、連れのことを揶揄する声が聞こえてきたので」
宝の言葉に、男達の表情が険しくなる。

「俺たちが何話そうと関係ないだろう。因縁つけるなよ」
1人が立ち上がり、宝に詰め寄る。
「何を話そうと勝手ですけれど、自分たちだけにしてください。お酒のせいで声が大きくなって、私たちの所にも聞こえてました。何なら、なんて言っていたのか言いましょうか?」
冷静に淡々と、宝が言い返す。

結局、店中の客が注目してしまった。

「すみませんお客様」
店長らしき人まで出てきて、
「もういいよ。帰ろうぜ」
男性達はそのまま席を立つと出て行った。

「お騒がせしてすみません。彼女ボクサーなんです。今日は試合でこんな顔してますけれど・・・普段はかわいいんです」
宝が店内に頭を下げると、客達から笑いが起きた。

先ほどまでの張り詰めた空気から、一気に和やかムードになった。