初めて入った取調室は、薄暗くて細長い部屋。
手前の椅子が警官で、机を挟んで奥が私たちの席。
「被害者のあなたたちに取り調べなんて、申し訳ありません」
店に来た人とは違う、私服の警官が頭を下げる。
「取り調べられているってことは、相手が何か被害にあったって申し出ているってことですか?」
鈴子が冷静に突っ込む。
被害って・・・
「まあ、そういうことになります」
そんな、
「鈴子は手を出していませんよ」
思わず言い返した。
だって、鈴子はずっとやられっぱなしだった。
その気になればいくらでもやり返せるのに、ずっと我慢していた。
「あなた、ボクサーなんですよね?」
警官が鈴子を見る。
「まあ」
「本当に、手を出してはいませんか?」
「はい」
ぶっきらぼうに答える鈴子。
その後も、事細かく店内の様子を聞き出す警官。
私も鈴子もだんだん腹が立ってきた。
「平井宝さん。あなたはあの店の店長さんですか?」
「オーナーです」
「オーナーさん?」
男性警官が首をかしげる。
「登記上は野崎亮平さんが経営者になってますが?」
ああ。
「野崎亮平は別れた夫です。店を購入するときに、契約しやすいように彼の名義にしただけです」
あの店は、私が離婚の慰謝料として夫からもらった物。
銀行から運転資金を借りるときのために、名義を亮平にした。
定職も貯金も無い私がいくら言っても銀行はお金なんて貸してくれないが、公務員で資産もある亮平であれば難なく審査が通る。その為にしたこと。深い意味など無い。
「元ご主人ですか・・・」
何だか、警官の顔が曇った。
手前の椅子が警官で、机を挟んで奥が私たちの席。
「被害者のあなたたちに取り調べなんて、申し訳ありません」
店に来た人とは違う、私服の警官が頭を下げる。
「取り調べられているってことは、相手が何か被害にあったって申し出ているってことですか?」
鈴子が冷静に突っ込む。
被害って・・・
「まあ、そういうことになります」
そんな、
「鈴子は手を出していませんよ」
思わず言い返した。
だって、鈴子はずっとやられっぱなしだった。
その気になればいくらでもやり返せるのに、ずっと我慢していた。
「あなた、ボクサーなんですよね?」
警官が鈴子を見る。
「まあ」
「本当に、手を出してはいませんか?」
「はい」
ぶっきらぼうに答える鈴子。
その後も、事細かく店内の様子を聞き出す警官。
私も鈴子もだんだん腹が立ってきた。
「平井宝さん。あなたはあの店の店長さんですか?」
「オーナーです」
「オーナーさん?」
男性警官が首をかしげる。
「登記上は野崎亮平さんが経営者になってますが?」
ああ。
「野崎亮平は別れた夫です。店を購入するときに、契約しやすいように彼の名義にしただけです」
あの店は、私が離婚の慰謝料として夫からもらった物。
銀行から運転資金を借りるときのために、名義を亮平にした。
定職も貯金も無い私がいくら言っても銀行はお金なんて貸してくれないが、公務員で資産もある亮平であれば難なく審査が通る。その為にしたこと。深い意味など無い。
「元ご主人ですか・・・」
何だか、警官の顔が曇った。