「ねぇねぇ、次の授業なんだっけ」
「えぇっと…古文じゃない?」
「バカじゃないの麗美、それ昨日の時間割!!つぎは音楽だよ」



今日も賑やかな教室を出て、ひとりで廊下を歩く。


まだ授業の15分前だから、ほとんど人はいない。

昼休みの今は、教室で喋ったり食堂で昼食をとったりする生徒も多く、比較的平和だとおもう。







「失礼します」


完全防音の音楽室に入ると、さっきまで少しはあった音も完全になくなる。

花島(はなしま)さん、今日も早いね」

「ピアノ、弾きに来ました」

「どうぞー」


音楽の先生は、まだ年齢も若く可愛いので、生徒にも人気がある。

私もやさしい先生だから打ち解けやすかった。




今日もきれいに調律されたピアノに触れる。4年前からここにあるものとは思えない、きれいなピアノ。






しばらくピアノを弾いていると、授業5分前だと気づいた生徒がどんどん入ってくる。



「あ、また花島さんピアノ弾いてるー」
「上手だよね、私クラシックとかよくわかんないけど花島さんのピアノはすき」


ピアノの音の他に、かすかに聞こえるそんな話し声に少し微笑む。

直接話しかけてくれる人はあまりいないけど、こうやって私のピアノを褒めてくれるのはすごく嬉しかった。