「中友!!これ合ってるか確認をよろしくー」

同僚の岸本が、私の横で声をかけて分厚い
書類を机の上に載せた。
私の机の上には、沢山の書類が積み重ね
られていて、今にも全て崩れ落ちそうに
なっている。

「はい…」
私は心が今にも折れそうになっている。
今日は会社で泊まりになりそうだ。
そう思うと、涙が出そうになるが目の前の仕事がまだまだあるので、涙なんて流してる場合ではない。
定時もとっくに過ぎて皆が帰っていき、
私のパソコンのタイピングの音だけが、
静かに響いていた。

おかしいなぁ…
私はお姫様になる筈だったのに。
人生はやっぱりそんなに甘くないようだ。



私は小さい頃からお姫様になりたい夢が
あった。大きな城に、家来と家政婦を
雇って1日優雅に過ごすという夢。

しかし現実は甘くなく、両親は農家で借金まみれ。毎日借金取りが来て、怖い思いをする日々だった。

そして、
いつか御曹司と結婚するんだ!
そして毎日うまい飯食べてやる!
家政婦を雇って優雅に過ごすぞ!

と高校生で決意をさらに固めて、
東京に上京した。一人暮らしも始めて、
そして国立高校に行き、有名大学に入り
夢に近づくためにとにかく努力した。
そして、有名なコンサルティング会社へ就職が決まった。のにも関わらず…

「この有り様ってなーにぃー!!」

思わず心の声が漏れるぐらいに、
今は仕事に追われて、夢なんて遠すぎる。
1週間に1回は、会社に泊まり込んで仕事を
している状況だ。


若干目から涙が滲んできた。
誰もいないフロアが寂しいのだろう。
きっと疲れてるんだろう。

コンビニでも行こうかと、席を立った
その時だった。

「大丈夫ですか?」

と突然後ろから声をかけられた。