次の日の朝。
 緊張してあまり眠れなかった。

 起きてすぐに朝ご飯の準備をする。手軽に食べられる食パンと、ヨーグルトに缶詰のミカンを入れたもの。ちなみに朝はいつもこんな感じ。

 お出かけ用に買っておいた、柚希とお揃いのカットソー着ようかな? 白地に小さな水色の花が散りばめられていてふんわりした形のチュニック。下はデニムのスキニーパンツ。着替えてから柚希と並んで全身鏡に映ると、柚希は嬉しそうだった。

 迎えに来てくれる予定だった七時をちょっとすぎてしまった。急いで柚希の胸元まである髪の毛をツインテールにして、準備が完成。ちょうどその時『着きました!』と彼からLINEが来た。

 急いで外に出ると、彼が車から降りてきた。

「江川さん、おはようございます。予定時刻少し遅れてすみません」
「いえいえ、大丈夫です。朝バタバタしてて、実は準備終わったの、ちょうど生田さんからLINEが来た時でした」
「朝はバタバタしますよね……。あっ、服、親子お揃い! 可愛いですね」
「ありがとうございます」

 すぐお揃いなことに気がついてくれた。 
 しかも可愛いだなんて――。

 ふわっとした気持ちになりながら、車に乗り、席に着く。

「じゃあ、出発します!」
 
 彼がそう言うと、車が走り出した。

 途中何回か休憩しながら、遊園地に着いたのは、十時くらい。

 車から降りる時、彼は「ちょっと待っててください」と言って、紙袋から何かを取り出した。ウィッグだ。

「これ、結構前に仲良いヘアメイクさんから『変装に使って!』ってもらったんですけど、今初めて使います」

 ちょっと照れくさそうに、初めての割には慣れた手つきで、そのウィッグを彼はかぶった。

「どうでしょうか?」

 どうでしょうか? って言われても。
 格好良いに決まっている!

 いつもはサラサラヘアーの黒い髪。
 今は明るい茶色の緩いウェーブ。
 どんな姿になってもイケメン。

「いいね! パパカッコイーよ!」
「いいと思う!」
 斗和ちゃんが言うと、柚希も続けて言う。
「私も、似合っていて良いと思います」
 
 彼が優しく微笑んできた。
 更にマスクをした彼は、もう別人。周りに正体バレなさそう。