「てか、試合負けちゃったよ」

「高瀬くんがいなかったからじゃない?」


笑いながら会話する彼女たちの意識は私には向いていなくて、私たちは密かに胸を撫で下ろした。


「あーあ。バスケもハンドもテニスもみーんな負けちゃった」

「あとはバレーだけだね」


バスケの応援に集まっていたクラスメイトたちと、今度はバレーの応援に向かおうと歩き始める。

その流れに流されるようにあとを追う。



その時―――。

背中に刺すような視線を感じた。


舐めるように全身を這うそれに、ぞくり、背筋が震えてそっと振り返る。

人混みのその奥に見えるのは、先ほどの女の子。


冷たく光る瞳に。強く滲む憎悪に。息が詰まるような感覚に襲われる。


それは、純粋な、恐怖。





あぁ、また繰り返すのか、と。


そんな思考が頭を過った――…