制限時間の短い試合はすぐ終わる。

その間、特に私たちの間に会話がなかったのは幸いだった。


体育館から出てくる人と入っていく人、その相反する波に呑まれないようにあい子たちを探す。


「あ、」

「さくら!よかった、大丈夫?」


私があい子を見つけると、同時にあい子も私に気がつく。

ようやくこの状況から解放された私は、正直ほっとした。


「あれ?高瀬くんここにいたんだ」

「えー、なんで試合来なかったの?みんな待ってたのに」


あい子の後ろから現れたクラスメイトの言葉にドキリ、変な誤解をされたらどうしよう、と緊張が走る。


「悪い、悪い。いろいろあってさ…」

「あれ、さくらも一緒だったの?」

「あぁ、たまたま会って」

「えー、いい…」


「いいな」と言いかけた結衣ちゃんは慌てて口を噤む。

よほど本人にはミーハーなファン心理を知られたくないらしい。


あい子がさり気なく私を庇うようにしながらその様子を見つめる。