ここは、私たちの住む隣の市の外れにある公立高校。
一応、進学校を謳っている。
レベルはそこそこではあるけれど、この辺りではわりと学力の高い方に分類される。
勉学のみならず部活動も盛んで、文武両道が特色の学校である。
電車を1本乗り換えて駅から少し歩く不便な立地にあるこの学校には、私たちの通っていた中学から進学する子はほとんどいない。
通学に便利な学校は他にいくらでもあるから。
知り合いもいない、全くの新しい世界に飛び込むのに、私には少しの抵抗もなかった。
むしろ狭く冷たい世界から、ようやく開放された気分だった。
中学の時は最悪だったから……。
楽しい思い出も、あった。
友達だって、いた。
だけど、それは……。一瞬の出来事であっけなく私の手を擦り抜けて、そして、壊れていった。
それから逃げるように、私はこの高校に進学を決めたのだ。
あい子だけが唯一、私の味方でいてくれた。