1人、重く沈んだ空気を纏う私はきっと、この希望に満ちた春には似合わない。

はぁ、と気づかれないように小さく息を吐く。


私以外のみんなはどれほどの希望を今、その胸に抱えているのだろうか、と周りを見渡す。


私だけが、青春という時の流れに乗りきれず取り残されているような恐怖に襲われながら、それに身を任せるしかないことが苦しく、歯がゆくもあった。


矛盾だらけの思考に呆れる。


青春を謳歌することへの憧れを今なお、捨てきれずにいる自分自身に辟易した。

その不安定な時の中には、楽しいことよりも苦しいことの方が遥かに多いというのに。



―――ふわり…


開け放たれた体育館の入口から、ふいに流れ込む春の風はまだわずかに冷たさを含んでいて。

始まったばかりの高校生活に、早くも負けそうになる気持ちをひとつ、身震いすることで誤魔化した。


(……がんばろ…!)



『では、新入生のみなさんは教室に移動してください』