「小峰さん…」


突然の声に、びくり、と体が大きく震えた。


(…どうして…?)


そこには、息を切らせた高瀬くんが逆光の翳から険しい表情を覗かせていた。


さっきまでとは違う意味で、恐怖が駆け巡る。


こんな姿、軽蔑されるに決まっている。


彼が必死に私を助けようとしてくれたことも知らない。

無意識に彼の名前を呼んでいたことを意識するより前に、私自身を拒絶されることに怯えた。



現に高瀬くんは、私の数歩手前で立ち止まったままそれ以上近づこうとも、以前みたいに触れようともしない。


怖くて、怖くて、堪らなかった。


その感情がどこから湧いてくるのか、なにから生まれているのか分からないまま、混乱と恐怖が最高潮に達した私は、次の瞬間。



ぷつり、と意識が途切れた―――。