今にも衣服を剥ぎ取られそうになった、その時―――。



大きな音がしたかと思うと、陰湿な空間に乾いた空気が流れ込む。


誰かの怒号が聞こえる。

埃っぽい空気が舞い上がる。


なにが起こったか理解する間もなく、纏わりついていた腕が離れていく。

一気に騒がしくなると、バタバタと人の気配が消えていった。



「さく、らっ…、さく…ら…」


気がつけば朝倉くんたちはいなくなっていて。

私を抱きしめているあい子の啜り泣く声だけが、がらんとした空間に淋しく響いている。


まだ状況が呑み込めない頭でも、あい子を傷つけてしまったことだけははっきりと分かった。


「泣かないで、あい子…、ごめんね、ごめんね」


抱きしめ返すだけの力もないまま、必死で繰り返す。

あい子は強く首を横に振りながら、ぎゅ、と私に巻きつける腕に力を込める。