そのままお互い少しの間、無言で歩く―――。
「もしなにかあったら、絶対に言うんだよ」
ふいに、あい子がまっすぐ私を見据えて力強く言った。
あい子に頼りっぱなしの私なのに、いつも私が1人で抱え込まないように先回って気遣ってくれる。
それが彼女なりの優しさなのだと思った私は、それに応えるように強く笑い返した。
「うん。ありがと」
だけど、私は勘違いしていたんだ……。
珍しく言い淀む歯切れの悪さに、私を映す陽光に透けたガラス玉のような瞳。
あい子のその台詞の裏に、とんでもない意味が隠されていたなんて。
その瞳の奥に、彼女の本心が隠されていたなんて。
今の私には、知る由もない。
―――この時。
あい子はもう、気づいていたのかもしれない。
これから私に起こる出来事に――…