「ねぇ、急にいなくなって心配したんだから」
「うん、ごめんね」
1年前のことを考えれば、あい子は最悪の事態を思い浮かべたはずだ。
それがどれほどあい子を苦しめたか想像できるから、易々と村上さんについていってしまった自分の不用意さを後悔するしかなかった。
宥めるように、私もその背中に腕を回す。
「村上さんに、なにされたの?」
「なにもされてないよ。大丈夫、ちょっと言われただけだから」
「でも、その服…」
横に置いてあった汚れた制服の入った袋を覗き込んだ結衣ちゃんの瞳は、「なにかされたんでしょ?」と言いたげだ。
「これは、泥濘に足を取られて転んだだけなの」
本当の自分を偽って、騙して、私はなんて臆病で卑怯なんだろう…。
さすがにぶかぶかの格好では帰れないからと、あい子たちが持ってきてくれたジャージに着替える。
罪悪感を抱えながらも、赦されたような錯覚を消したくなくて脱いだTシャツを胸に抱きしめた。