「小峰さんが好き。なにがあってもそれは変わらない。村上の言ってたこと俺は信じてないけど、あの頃になにか辛いことがあったんだろうとは思う。でも、小峰さんが言いたくないことは聞かない」


全てを曝け出すことはできなくて、後ろめたい秘密まで隠しているのに、変わらず好きだと言ってくれる。


「嬉しいこと楽しいことは共有したいし、辛いこと苦しいことは受け止める。俺のこと、好きじゃなくてもいいよ。嫌いじゃないんだったら利用してくれたっていい」


まっすぐ瞳を貫かれ、その視線に囚われる。

なぜか切なくて、苦しくて、泣きたくなるような胸のざわめきに動けなくなる。


「もっと教えてよ、俺しか知らない小峰さん」


さっきまでの真剣な表情を崩して瞳を細める高瀬くんは、普段の爽やかさからは想像もつかないくらい蠱惑的だ。


「ねぇ、今から最低なことしてもいい?」


頬に触れた指先を意識した時には、目の前に綺麗に整った顔があった。


「キス、してもいい?」


耳元で囁かれた台詞に意味を理解する間もなく、微かに動いた高瀬くんに、そこから逃げ出すことなんて考えつきもせず、反射的にぎゅ、と目を閉じた。



と、唇に触れないギリギリのところに、柔らかく口づけが落とされた―――。