「小峰さん、本当にごめん」


授業が終わると、すぐに高瀬くんが私のもとに飛んでくる。

「ごめん」と繰り返す彼に、なぜ私がこんな目に遭わないといけないのか、と理不尽な怒りが湧いてくる。


そんな感情をなんとか抑え机の中のものを全部取り出して、見事に全滅していたことには怒りよりも脱力感に襲われる。

バッグは?と開けてみると、同様に中身はぐちゃぐちゃだった。


「…酷い…」


誰かが呟く。

それが誰の声なのか、分からないくらいクラス中の視線が集まっていた。


「どうするの…?これ…」


ぼろぼろに切り刻まれた教科書たちだけど、途中で諦めたのか数学以外は使えないほどではなかった。


「大丈夫、数学以外は使えるから」

「でも、」

「本当に大丈夫だから」


みんなはなにか言いたげに顔を見合わせていたけど、私は気丈に振る舞い続けた。