「ねぇ、なにがあったの?」


下校中、2人きりになるとあい子は待ち構えていたかのように核心を突いてくる。



ただ生きているだけなのに、それだけで運命は私をその渦中に巻き込もうとする。

放っておいてほしいのに、穏やかに過ごしたいだけなのに、決してそうはさせてくれない。


私にはどうする意思もないのに。



「ごめん、さすがにもう静観してるだけは無理」


私があい子に心配をかけたくなくて悩んでいるように、あい子も私が追いつめられていく様子をただ眺めているのは辛いのかもしれない。


「村上さんの台詞に、心当たりある?」

「分からない…」


それでもなお、口に出すのが憚られて曖昧に濁そうとしてしまう。


そんな私の心情すら、あい子にはお見通しなんだろう。

強い日射しに瞳を細めるように、あい子は静かに怒りを滲ませる。


私もこれ以上誤魔化し続けられるほど、強く自分を保っていられる自信がなかった。