翌日。

夏休み前の浮かれた空気がはびこる教室で、最初の綻びが生じ始める……。



「輝ってば、聞いてよ!」

「…んー、聞いてるし…」

「もぅ!」


村上さんの甘ったるく媚びるような口調は、同性としてあまり好きにはなれない。


高瀬くんの前の席を堂々と陣取り話しかけるも、彼は次の授業の予習に集中しており、話半分にしか聞いていない。

というか、お手洗いに立った隙に自分の席を占領され、戻るに戻れないクラスメイトの女の子がかわいそうだ。


「また、おまえいんのかよ」


高瀬くんに擦り寄る村上さんを一瞥して教室に入ってきた橋本くんは、そのまま彼のもとへ向かう。


「輝、あっちで先輩が呼んでる」

「分かった、サンキュー」

「おまえ、もう戻れよ」


村上さんに言い残すと、高瀬くんと橋本くんは揃って教室を出ていった。