「そのタオル…、使ってくれてるんだ」
「これ?うん、使うのもったいないと思ったんだけど使わない方がもったいないかなって。気に入ってる、ありがとう」
お手洗いから帰ってきたあい子が手にしていたのは、先週のあい子の誕生日に結衣ちゃんと花菜ちゃんとプレゼントしたもの。
紺地にゴールドの格子とあい子のイニシャル "A" の刺繍が入った、少しクールなデザイン。
気に入ってもらえてよかった。
アイスクリームショップをあとにして、まだまだ茹だるように暑い夕刻の帰路を辿る。
朝の憂鬱さは幾分か和らいでいて、少しだけ私の心に伸しかかっていた重たいものが取れた気がする。
こんな風に無邪気にはしゃいだのは、本当にあの日以来のことだった。
あい子を巻き込みたくない、哀しませたくない。
そう思う一方で、本当にあい子がいてくれてよかったと心から思った。
いつかもっと私が大人になって、自分の荷物は自分で背負うことができるようになったら、あい子に負担をかけることもなくなるのかな。
今にして思えば、あい子は全部知っていて私を元気づけようとしてくれていたんだって。
そんなあい子の優しさに気づきもしないで、私はどれだけ甘えていたんだろう……。