「ほんとに?なんか変だよ、今日…」
「うん、ちょっと…。寝不足かな」
それでも疑いの眼差しを向けてきたあい子に、再度「なんでもない」と告げると、それ以上深くは追求してこなかった。
眠れなかったのは事実。
何度瞼を閉じても、脳裏に浮かんでくるのは悪い光景ばかり。
ようやく落ちた浅い眠りの中では悪夢に襲われ、そのたびに飛び起きた。
「てか、土曜日大丈夫だった?」
「え!?」
ドキリ、とひとつ心臓が大きく跳ねると、次にはあい子に聞こえてしまうのではないかと思うほど、どくどくと音を立て始めた。
「…どうしたの?稲葉先生の雑用、大丈夫だった?」
「あ、あぁ、うん。なんとか終わったよ」
「ならいいけど、やっぱり変だよ?」
あい子はなにも知らないはずなのに、つい過剰に反応してしまう。
普通にしなくちゃ、ばれないようにしなくちゃ。
土曜日のことなんて誰も知るわけがないのだから。
そう思うたびに、逆に心の内が漏れて露呈してしまうような気がした。