「小峰、今週俺ら図書当番。忘れんなよ」

「ありがとう、覚えてるよ」



朝の教室。

騒がしい喧騒の中で、私はクラスメイトのある男子生徒と言葉を交わす。


話しかけてきたのは私と同じく図書委員を務める男子で、私たちは新年度に入って3週目の今週、各クラスごとに持ち回りで行われる図書当番の担当だった。


私は本を読むのが好きで、本の匂いが溢れる、あの静かな空間が気に入っていたから当番の仕事は苦じゃなかった。


その男子は私とは違う小学校の出身で、1年生の時に一度同じクラスになったことがある。

クラスの中心というタイプじゃないけど、明るくて誰とでもフランクに接する人当たりのいい人だった。



「あれ、今週図書当番だっけ?」


隣にいたあい子が私たちのやり取りに不思議そうな顔を見せる。


「うん。先週話したよ」

「そうだっけ?ごめん、忘れてた」


先週の帰りに説明したはずなのに、どうやらあい子の頭の中からは抜け落ちていたようで苦笑を浮かべる。