「ならどうして?」

「あなたは自分の命を引き換えにしてでも平野さんの記憶を消して欲しいと言いました」

「はい」

「依頼主の依頼を遂行するのも私の使命です。今回は特別です。あなたのした事が平野さんにとって正しいかどうかはわかりません。でも、あなたの強い愛情を感じたのは事実です。それに私は心を動かされました」

「じゃあ先輩は、もう僕の事は?」

「あなたと付き合っていた時の記憶はありません。でも、それ以前の事はわかりません」

風間さんは曖昧な言い方をした。