一翔くんと連絡も途絶え、夏休みに入った。学校は休みだし、倉庫に行くこともないから、相変わらず彼とは会えないまま。ずっと、もやもやした気持ちでいる。

 何もしたくないけれど、占いのバイトはある。

 夏休みに入ってから2週間が経った日、和哉くんがお店にやってきた。

「久しぶりだね」
「う、うん」
 私はなんだか気まずくて、上手く言葉が出てこない。

「あれから、一翔と会ったりしてる?」
「ううん、一度も」
「そうなんだ……。一翔、姿をみせなくなったんだ……」
「えっ?」
「あれからも倉庫に顔だしてたんだけど、1週間前くらいから来なくなって、電話とかしても繋がらなくて。チームのやつらも、一翔がいなくて乱れ始めてる」
「……」
「一翔、ほぼ毎日倉庫に来てたんだけどな……ってか、唯花ちゃん、アイツのこと気になってるんでしょ? ずっと」
「……うん」
「急に話変わるけどさ、唯花ちゃんの秘密ばっかり知ってて、なんか不公平だから、俺の秘密も教えてあげる!」
「和哉くんの秘密?」
「うん。実は俺、いつでも人の心の色と言葉が見えるんだ」
「えっ?」

 驚いて私は思わず大きな声を出す。 

「唯花ちゃんもでしょ? 俺の予想ではここでだけかな?」
「う、うん」
「一翔、倉庫に来てた時、ずっと唯花ちゃんのこと考えてたわ」
「一翔くんが、私のことを?」
「そう。そして色が段々とくすんでいって、最後にあった日は、もう真っ暗で……俺の話も一切信じようとしないし。唯花ちゃん、今すぐアイツのとこ行ってあげて?」
「今すぐって……私、バイト中だし」
「ここは、俺に任せて」

 一翔くんは今どこにいるんだろう? 家かな?

「多分、そう」
 心で呟いていたことに対して彼は返事をした。

「本当だ……本当に心が見えるんだね。私は今、家に一翔くんがいるかな?って考えてた」
「本当だよ。唯花ちゃん、一翔のところに行きな?」
「うん」

 私はフェイスベールを外し、店を出ようとした。

「本当に一翔は、何でも手に入れられるな……ねぇ、ひとつだけお願い!」
「何?」
「せめて、この能力使えるの、ふたりだけの秘密にして? 秘密にして、優越感に浸りたい」

 またふたりだけの秘密が。
「うーん」
 私はとても曖昧な返事をした。

 曖昧な返事をしたけれど、私自身も一翔くんには言わない方がいいかな?って思っている。