バイクに乗り、走る。
 途中で1回だけ休憩し、約2時間ぐらいで倉庫に着いた。まだ外は明るい。

 いつも暗くなってからメンバーが集まってくるし、泊まり組も今日はいなさそうだから、倉庫には今、誰もいない。
 バイクを停め、降りると和哉くんは倉庫を開けた。彼は倉庫の隅に置いてあった本とノートを手に持った。私は彼の一連の動きをソファーに座りながら眺めていた。

「その和哉くんが持ってるやつ、勉強ノート?」
「うん、そう」
「きちんと勉強してるんだ」
「あっ、これね、親の体調最近良くなくて、会社引き継ぐ予定だからさ、それの勉強だよ」

 女の子に対してはとても軽そうなイメージなのに、こういうことはきちんとしてるんだ。

「惚れた?」

 でもひとこと多いな、この人。

 彼が私の横に座る。

「ねぇ、今日秘密もうひとつ増えちゃったね?」
「えっ? もうひとつ?」
「俺とキスしたこと。これも一翔にバレたくないよね? 秘密にするからさ、俺ら、付き合わない?」

「脅迫して付き合うとか……それで付き合うってどうなの?」
「別に、一翔に秘密言ってもいいんだけどな」

 バレたくない。バレたくないけれど。でも考えてみたら、この出来事を彼が知ってしまったからって、彼は何も思わないのではないだろうか。それに……。
「和哉くんは、一翔くんのものを奪いたいって言ってたよね?」
「うん。言った」
「私を一翔くんのものだと思っているっぽいけれど、私は彼と付き合っているわけではないし、彼は私のことなんて何とも思ってな……」
 話の途中で心がぎゅっとした。痛くなった。そう、何とも思ってないんだ。

「じゃあ、キスしたこと、一翔に言っちゃってもいいの? 他の秘密も全部」
「それは……」

 どう返事をすればいいのか分からなくなっていた時、後ろから声がした。
「なんでふたりきりでいるの? 俺に秘密って何? キスしたってどういうこと?」

 振り向くと、一翔くんが眉間にしわを寄せ、腕を組みながら立っていた。