中学の頃、親友を怒らせた。
 たったの数行。時間でいえば、一分にも満たない、短い文章のせいで。
 親友のことを思って発した言葉だったのに、わたしのそれは、親友を不快にさせるものでしかなかった。

 お互いが、距離を置くようになって。歩み寄ることを諦めて。
 ふたりの間にできた溝を、そのままにしてしまった。その溝を埋める勇気が、わたしにはなかったのだ。

 わたしの言葉が、親友と過ごした八年間を台無しにした。
 
 それが、今も強く残っていて。
 相手を思えば思うほど、伝えることが怖くなった。慎重になった。
 言葉を選んで、選び抜いて。時間をかけて見つけたとしても。受け取る相手にとっては、不快なものかもしれない。
 そう考えると、すべてが億劫になる。
 自分をさらけ出すことも。相手を理解しようとすることも。相手に合わせることも。自分に合わせてもらうことも。
 億劫になってしまった。

 だから、やめた。
 心のバランスを保つために、人と深く関わることをやめた。

 正しいか、正しくないか。
 答えはすぐに出るものでもないし。
 何年後か、何十年後かに、後悔だけが残るのかもしれない。
 それでも今は、こうすることしかできない。