四人グループのうち、わたしだけ彼氏がいない。
 もしかして。そうなることで、わたしが寂しい思いをするんじゃないかって、心配してくれてるのだろうか。

「わたしなら大丈夫だよ」

 そんなの、大丈夫に決まってる。
 優しいんだね、と笑ってみせると、心音は照れくさそうな顔をして、人さし指で眉毛の上を掻く。
 せっかく整えた前髪が散らばってしまった。

「ウチら、そろそろ行くけど」
「わたしは、もう少ししてから帰る」
「そう?」
「じゃあ、また明日」
「うん。バイバイ」

 彼女たちを見送ったあと、スクールバッグから小説を取り出す。
 あともう少しで読み終える。
 次は何を読もうかと考えながら、空色の栞が挟んであったページを開いた。

 コトン、と。
 あと少しで物語が終わるところで、机に缶コーヒーが置かれた。それも、二缶。
 驚いて顔を上げると、すぐそこに彼が立っていた。

 なんで、いるの……?

 てっきり帰ったのかと思っていた。
 彼は終礼が終わると、すぐに姿を消すからだ。
 ドクドクと、心臓が動きを速める。

「どれ」
「……え?」
「どっちがいいか、訊いてる」
「……」