街灯に照らされた細かな雨を浴びる彼は、派手な集団の中でも一際目立って見えた。
整った顔立ちをしているからなのか。それとも。周りが馬鹿みたいに騒いでいる中、ひとり静かに佇んでいるからなのか。
「まゆか。あれ、パパの車よね?」
ママが、ハザードランプを点滅させる車を指さした。
「あ、うん」
信号無視をして交差点に進入したバイクが、大きな円を描くようにUターンする。
そのバイクを目で追う彼に気づかれないように、ママの手を取ると、路肩に停車中の車に急いで乗り込んだ。
いつもひとりで行動している彼が、集団の中にいた。
暴走族に入ってるらしい、という噂は本当かもしれない。そう考えると、胸の奥がザワザワと騒がしい。
「あぁ、まただ」
ハンドルを握るパパが、ふぅっと長く息を吐き出した。後ろからまた嫌な音がする。
パパはサイドミラー。わたしは後部座席から、くるりと体を捻って後ろを確認した。
何台ものバイクが、わたしたちの車を追い越していく。
「……ぁ、」
一瞬だったけど、確かに見た。
二人乗りのバイクの後ろに跨っていたのは、間違いなく彼だった。



