耳障りな音は、大通りに近づくにつれて大きくなった。それを追いかけるパトカーのサイレンもまた、そこに被さるように鳴り響く。
 目の前の建物のガラスや壁面を、赤いライトが幾度も叩く。

「パパ、大丈夫かな」
「ほんとね」

 カスタムが施された数台のバイクが、目の前を通り過ぎていった。
 わたしたちを拾うため、車で大通りに出たであろうパパのことが気にかかる。

 何台もの車がスピードを落とし、端に寄る。交通量はさほど多くないように見えた。それでもここは、交差点付近だ。パトカーをやり過ごそうとする車のテールランプが連なっていく。

「サイアク…」

 応援を呼んだのか、サイレンの数が増えると、歩道にいる人たちの数も心なしか増えたような気がする。
 遠のいたはずのバイクの音が、またこちらへと向かってくる。今度は反対車線のほうだ。

 横断歩道の信号は、青。それでも渡れずにいる歩行者。
 眉間に皺を寄せた中年夫婦。スマホで撮影を始める学生風カップル。それから。

「………あ」

 見るからに近寄りがたそうな集団の中に、見覚えのある人がいる。
 うちの学校で一番の有名人、柳田昇矢だ。