少女は後ずさる僕と優介に気付いているのか、小さく前に一歩、歩み寄る。

「ヒヒッ…ワタシハ…チカコ…ワタシハチキュウノニンゲンジャナイ…オマエラトイッショニ…スルナ…」

少女は聞かれた質問にさっきまでとは違う冷たい声で告げる。
僕は優介の肩を借りて、ゆらゆらと立ち上がり、ゆっくりと一歩一歩また後ろへと下がる。

「コワガルナ…ニンゲン…オマエラニキョウミハナイ…アルノハ…」

僕と優介は動きを止めた、少女は恐ろしいほどの早さで千賀子の前へ出る。

「……オ・マ・エ・ダヨ…!千賀子…チャン」

少女はクスクスとまた怪しく笑っていた。

「え…わた……し?」

僕が千賀子の名前を呼ぼうとした時にはもう千賀子の姿はここには居なかった。

「千賀子チャンヲ、カエシテホシイナラ…ガッコウニオイデ…ユウジ」

千賀子と少女の姿が無くなかった後に風に流されるようにして、少女の声が聞こえた。
何故少女は千賀子と僕の名前を知っているのだろう。僕は空をゆっくり見上げた。

「千賀子ーーー!!」

僕は千賀子の名前を叫んだ、叫んでも千賀子は帰って来ないのを知りながら。