愛理は泣き続けていた。
蓮二はそれを後は一言も何も言わないで見守っていた。
それは彼なりの優しさなのだと僕は思った。

「……クゥン……」

ふいにまた大人しかったルイが僕の足元で僕を呼ぶように小さく引っ張った。
僕はルイの方へと顔を向けるとルイは僕をゆっくりと反対のビルの裏路地の方向へと向けようとした。
僕は引っ張られるままに反対のビルの裏路地の方向を向いた。

「…ルイ?……何かいるの?」

ルイは僕の問いに分かっているのか分からないが、ただ黙っていた。
皆も僕とルイのやり取りに気づいたのか、不思議そうに僕の方へ来る。

「雄司どうした?…何かあるのか?」

優介がゆっくりと歩いてきて、僕と同じようにビルの裏路地をじっと見る。

「分からないよ…ルイが引っ張ったからさ…」

僕はただビルの裏路地を見えない目で見ていた、が、一瞬の事だった。

「な!!雄司、危ない!」

優介が慌てたように僕の名前を呼んだ。
僕は名前を呼ばれて優介の声の聞こえる方を向こうとした。

「…え……?」

その時だった、黄色い眼が裏路地の薄暗い所から現れ、勢いよく僕に体当たりをした。