誰も居なくなった屋上で、勇気はただ一人大の字のような形で横たわっていた。もう獣は雄司達を追って行ったのか、姿は見えない。勇気の目からは大粒の涙がゆっくりと溢れ落ちた。
屋上に居るのは勇気だけ、引き裂かれたのか勇気の体の所々は血がドクドクと流れ出て、辺りは血の水溜まりが出来ている程だった。勇気の意識はもうないはずだった、だが勇気は微かに小さく口を開く。

「あ…いり…好き、だよ…ずっと…生き…ろ…」

途切れ途切れに勇気は呟く、だがむなしい程にその小さな声は静かな世界に響く事無く消えて言った。
その声はきっと誰にも届いていないのだろう。
勇気は静かに息を引き取った。
誰も居ない、始まりの屋上で…。



水島勇気(17歳)

『逆転世界〜始まりの屋上〜』にて一名脱落。