また周りの視線が僕に伝わってきた。

「いや……いやよっ!!」

愛理が僕に向かい怒鳴るように言った。

「なんで?…勇気を見逃すの?」

愛理が少し低く、唇を噛み締めながら弱々しく今にも壊れてしまうような声で言う。
僕の胸に針でも刺されたかのようにズキズキと痛んだ。

「そうだよ…でも勇気は僕らに逃げろって言った…僕らを思って…それなのにこのままここに居たら……あの獣に僕等皆食べられるよ?そしたらゲームオーバー…になるんだよ?」

僕はぐっと自分の心に渦巻く感情を押さえて、ゆっくりとした落ち着いた口調で言う。

「雄司の言う通りだ…愛理今は逃げよう…」

今まで黙っていた蓮二がふいに口を開いた。
こうしている間にも獣は勇気の体の肉を食らい付いているらしく、勇気の苦痛な声と獣の獲物を食らう音が聞こえる。
獣はまだ一人の獲物に夢中になっているらしく、周りを殆ど気にも止めない様子だった。

「逃げるなら…今しかないぞ…」

冬斗はゴクリと唾液を飲み込み、僕等に言った。
冬斗の言う通り、逃げるなら今しかない。