僕等は狭い屋上の上を必死に走り逃げた。
だけど、人間の足の速さ、獣の足の速さとは比べものにならない。
僕等がゲームに巻き込まれて最初の悲劇が襲った。

「うぁぁぁぁああｯ！！」

悲鳴が辺りに響き渡った。僕等は一瞬動きを止めた、僕には見えないが皆には見える光景。
隣に居た千賀子は「ひいっ」と声を喉に詰まらせて、僕の手をぎゅっと強く握った。

「いゃあああああっ！！勇気ーー！」

愛理がいつもの感じとは全く違う、取り乱したような声で名前を呼ぶ。
勇気は獣に捕まったのだ、僕には音しか聞こえない。
だがその音さえも恐ろしい恐怖を感じさせる程だった。
僕以外の皆が見ている光景は言葉には表せられない程の恐怖と絶望を与えるものなのだろう。

「うああっ…に…げろ…早くっ……にげ…ろ…ゲホッ…」

勇気は獣に襲われながらも、僕等へ一生懸命に声を出し告げた。

「勇気っ！…勇気！嫌…いやだよ」

愛理は涙を流しているのか、声に詰まりながらも鼻水を啜っていた。

「……勇気ｯ！…くっ…皆逃げよう…」

僕は唇を噛み締めて、涙を堪えながら静かに言った。