アレン=サラマン 現15歳
サラマン侯爵家嫡男
赤みがかった茶色の瞳
後ろにひとつにまとめた艶のある赤い髪
180cmの長身で筋肉質な焼けた肌

私は未来の彼を知っている。


ゲームの断罪シーン。

王子の後ろに控えていたのは
第一王子の護衛騎士を務める未来のアレンだ。

ティアナに虐められたヒロインを助ける第一王子。
その傍らに彼はいて、
"自分を守れるだけの強さ"を持つんだって
ダンスだったりマナーだったり
この世界で生きて行くための知識をくれる。
アレンがヒロインに知識を授けた後は、
決まってミニゲームが発生して
クリアすると魅力や知力が上がっていくのだ。
優しくて頼りになるお助けキャラで、
ヒロインにとってはお兄ちゃんみたいな存在。

誰もがティアナを批判し敬遠する中で、
アレンだけはティアナと向き合い優しく諭し続けた。
(ティアナは邪険にするのだが・・・)
傲慢な態度しかとらなかったティアナを
最後までかばってくれた
心配になるくらいに人が善すぎて優しい人。

…隠しキャラかなって思ってたけど真相は分からないまま。




「そろそろ行こうか。」
意識をとばしていると、
無表情のレオンが口を開いた。


ゲームの世界で
レオンは美しい美貌と冷たい瞳から
"氷の貴公子"と呼ばれる。

レオンは、
攻略していない私でも結末を知っているくらい
クチコミサイトで酷評の常連だった。

レオンは厳しく厳格な環境で育ち
人前で楽しんだり笑ったりすることはなく
いくらプレイしても表情が変わらないため
最後までうまくいっているのかどうかが分からず
途中で諦めて他の攻略に方向転換する人が多かった。
(しかも、攻略しても態度はあまり変わらないらしい)

課金制の溺愛ルートでも言葉が少し優しくなるくらいで
金を返せと批判が殺到した。
そこで制作者側は、新たな特典映像として
追加課金制の結婚式のスチール映像を用意した。
ヒロインの花嫁衣裳を見て
やーーーーーっと、レオンは笑顔を見せるらしい。



部屋を出てガーデン会場への通路を進み
ガーデンに繋がる扉の前に着いた。

アレンが扉の前にいる
二人の護衛騎士に声をかけると
両サイドに別れ扉を開く。

「グランデ様、サラマン様
 ありがとうございました。」

カーテシーでお礼を伝えると

「・・・」

レオンにじっと瞳を見つめられた。

無表情でこちらを見るレオンの眼差は
氷のように冷たく感じる。

(こ、これが氷の貴公子・・・!)
ティアナは少したじろいだ。

レオンが口を開かないことには
従者であるアレンも口を開くことができない。

「・・・」

レオンと瞳が重なったまま
そらしたくてもそらせない。

「あの・・」

見かねたアレンが
レオンに声を掛けようとすると・・

「君のセリフには根拠がない」
ふいにレオンが口を開いた。

「え・・?」

氷のように冷たいレオンの瞳からは
何の感情も読み取れない。

はっと
私がアレンに伝えた言葉を思い出した。

重なったレオンの瞳が
私を指摘している様に思えてきた。

「あっ・・えっと・・・・」
ゲームで知っているからです!なんて言えるわけがない。
返答に困り私はあたふたと手を動かしていると

「でも、信じてみたくなる」

「!」
思いもよらない言葉に
ティアナは目を見開き固まった。

「ふっ」
レオンの瞳が優しくゆがみ
瞬きのする間に無表情に戻っていた。

え!
いま笑った!?


混乱する横目でアレンを見ると
アレンはあんぐりと口を開けていた・・