「私の知り合いは『みやこ』という名のグループで、超常現象を主にした執筆をしているんです」
「『みやこ』って、もしかして地域新聞に載ってる、あの『みやこ』さんですか……⁉」
サークル名を耳にした途端、僕の隣にいた幼馴染が嬉しそうに声を上げた。心做しか、目がキラキラと輝いている。
「はい。もしかしてご存知ですか?」
「もちろんです! 私、あの作品すごく好きで、新聞とか雑誌に載ってるのは全部読んでるんですっ!」
「ははっ、そうだったのかい。それは彼女たちも喜ぶよ」
興奮気味に話す幼馴染に、男は心底嬉しそうに微笑む。その表情から、彼がちゃんとサークル『みやこ』の活動を認めていることを悟る。その会話を一歩後ろで聞いていた僕も、聞き覚えのある名前に目を見開いていた。
(僕も見たことがある)
確か、一か月か二ヶ月ほど前だっただろうか。地域限定で配られている新聞――通称、地域新聞で一際話題となった掲載物があった。内容は近所の怪奇現象や超常現象をまとめたもの。それだけならばいつものように酔狂な人たちがいたものだという事で終わるのが、作品の中で、彼女たちは僕たちの想像の斜め上を行ったのだ。
――そう。バラバラのはずの怪異を一つの“物語”として作り上げたのだ。しかも、四人が四人、個性溢れるの作品を書いていた。小説じみたものもあれば、四つに分かれた漫画がいくつか並んだものもあり、ポエムまで挟まれていた時はつい笑ってしまったくらいだ。中々見る事の出来ない発想に、読者は心を惹かれ、口コミが口コミを呼び、予想以上に大きなものとなったのだ。もちろん、僕自身も例外ではない。ちゅう秋から聞いたそれに目を通した瞬間、気がつけば朝になっていたのだから。
「失礼。大学で起きた、変な出来事とは?」
「ああ、そうでした。すみません、彼女たちのこととなると見境がなくなってしまって」
「いけませんね、これじゃあ」と苦笑する岡名は、恥ずかし気に後頭部を掻く。一つ咳払いをして、彼は話を戻した。
「先ほども言ったように、『みやこ』では超常現象を主にしたことを書いていますが、そのためには資料を集めなくてはなりません。書物で調べたり、現地に行って近隣の人たちの話を聞いたり。その中で“ホンモノ”が紛れることがあるのが、怪奇現象です」
「ホンモノ……」
「ええ」
力強く頷く岡名。彼の言いたい事が何となく見えて来たような気がする。