「そうだ!」
「なるほど」
ちゅう秋の言葉に、話はやっと前に進み出した。腕を組み、偉そうに頷いた探偵少年は、どこから出したのか分からないノートを取り出してきた。少し草臥れたノートの表紙に書いてあるのは『探偵活動日誌』の文字。恐らく今までの依頼をそこにまとめているのだろう。見かけによらず、案外真面目な奴だ。
「そうだね……依頼と言っても色々種類があるけれど、どんなものが受けられるんだい?」
「ふっふっふ、よくぞ聞いてくれた! もちろん、探し物から殺しの犯人まで全てだ!」
「性格ブレすぎじゃないか?」
「はははっ。でも、個性的で忘れないだろう?」
「そりゃあ……まあ」
人を覚える事が苦手な僕にとって、個性というものは利点でしかない。
(とはいえ、個性的すぎても敬遠されるのがオチだろうに)
というか、彼のその自信は一体どこから来るんだ。
「なるほどね。それなら一つ、心当たりがあるよ」
「本当か!?」
「ちゅう秋!?」
ふと聞こえた言葉に、つい声を上げてしまう。――信じられない。まさか会って間もないやつに依頼を任せるのか!?
驚愕に目を見開いていれば、にこりと笑みを浮かべられた。その笑みにゾッと嫌な予感が胸を過ぎった。
(こいつ、何を考えているんだ……!?)
初対面、それもついさっき言葉を交わしただけの、一つ下の後輩。名前も言わず、自身を『探偵だ』『神だ』という人間。そんな得体もしれない奴に関わるだけでも嫌だと言うのに。
(それとも、何か策があるのだろうか?)
僕が絡まれてると思って助けてくれるための嘘であったとか、適当な仕事を回して満足させるとか。嗚呼、彼なら確かにやりそうだ。
「まあまあ、まずは話を聞いてみてくれ」
――受けるか受けないかは、君次第だ。
そう告げるちゅう秋に、探偵少年は目を輝かせ、僕は顔をしかめる。三者三様の反応もそこそこに、僕達はちゅう秋に連れられるまま教室を後にした。

「学校の外で起きていることなのか?」
「その通り」
つかつかと前を歩く彼らの背に、僕はじとりとした目を向ける。……なんだか、想像してたのと全然違う展開になっている気がするのだが。
(……まあ、人を騙すなら身内からっていうしな)
きっとちゅう秋はそういう戦法を組んでいるのだろう。きっとそうだ。そうに違いない。
「ちょうど相談を受けていてね。今日彼と会う約束もしていたし、どうせなら一緒に行ったほうが早いだろう?」
「そういう事か! 確かにな!」
「納得してくれたなら良かったよ」